少し前のこと
1997/04/04

 1993年の春。ちょうど今ごろ。確かイタリアにいました。少し肌寒いこの時期。毎週水曜日。バチカンではローマ法皇に逢うために世界中から人が集まります。ローマへ400年前に旅をした子供たち。天正少年使節団の史実をたどったオペラ公演のために、ローマヘ出かけた時の事です。
 われわれの申し入れをローマ法皇サイドが快く受けて下さり、この日は御前演奏となりました。祭壇上に上がることを許され、歌を聞いて下さり、握手をしてもらったところ。もうモモも夢中でした。8年の歳月をかけてローマにわたったこの少年たち。キリスト教の偉大さに目をみはるばかりだったに違いありません。

 私の人生のなかで大きな出会いが何度かありますが、このオペラとの出会いは大きな節目でした。
 1991年春、音楽雑誌「音楽の友」にオーディション記事が乗っていました。(つい最近亡くなられてしまいました)柴田南雄先生のオリジナルオペラが上演される、そのために出演者を募集する。というものでした。何かとてもメッセージを感じてオーディションを受け稽古が始まりました。
 8月21日に初演のため、初夏の暑さと共にその稽古を思い出します。私の役は、この史実をこの時代に運んでくる「時の旅人」、客席後ろから、アカペラでスキャットをしながら舞台まで出てきます。九州のこの4人の少年はキリスト教弾圧という将来など予測すらしないで、一心にローマへ出かけるのです。
 そのときの初演チームはほとんど大学の先輩後輩でした。クーラーが壊れた車で長崎の町を走ったり、今思うと楽しい思い出です。
 私は高校時代 遠藤周作さんの「沈黙」に大変にのめり込んでいました。オペラとしてのこの作品は どんな困難にも負けなかった 少年たちの勇気!その勇気をみんなでやさしく眠らせよう!!というテーマです。この心がいつまでもあなたの心に残るでしょう。とまたこの世を去っていく私の役が本当にお気に入りでした。
 4人の少年の一人「ジュリアン」の縁りの地では、殉教の場面で本当に嵐になったこともあります。4人の魂が不思議な現象をたくさん起こしました。

 こうして時々、私の心の扉を4人が叩く様な気がしてなりません。


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